日本国内での人材不足の影響もあり、企業活動におけるコア業務以外の業務を外部の会社に委託するBPOやアウトソーシングは注目を浴びてきました。
その中でも、海外BPO(海外アウトソーシング)は、長年中国やインドの企業への委託が多く行われていました。しかし、近年ではベトナムやフィリピン、ミャンマーなど他の国への委託も増加しています。
注目を浴びている海外BPO(海外アウトソーシング)の特徴や事例などを見ながら、その中でもなぜミャンマーが選ばれているのかを紐解いていきます。
スピード経営の時代に注目されるBPO
昨今の経営環境の変化スピードは速さを増す一方で、企業としては環境変化に併せて様々な対応を打つ必要があります。その中でも日本国内での人材不足とコスト高は、多くの企業にとって頭を悩ませる問題になっています。
こういった背景から、国内外を問わず、業務の一部または全部をアウトソーシングするBPOが注目されているのですが、それは、次のようなメリットがあるからです。
- コア業務への人的リソースの集中
- 業務品質の向上
- 業務の効率化
少子高齢化で人材が不足し、限られた経営資源で事業をスピーディに展開するには選択と集中が欠かせません。自社のリソースをどこに向け、それ以外を効率的にアウトソーシングすることが重要になってきます。BPOは3つのメリットを通じてこの経営課題を解決してくれます。
またコストを削減し、人件費(固定費)を変動費化することが可能になりますので、事業の繁閑や状況に応じた体制確保が可能な点も、注目される理由です。
BPOを行う上での注意点
そんなBPOもメリットだけではなく、以下のような注意点もあります。
- 対象業務の見極め
- 管理手法の検討
ひとつめの「対象業務の見極め」ですが、収益の要になるコア業務や、その前後にある業務と密接に連動している場合は、自社で行うことになるでしょう。これは海外かどうかに関わらず、BPOであれば自社でノウハウを貯める必要がない業務や外部に委託した方が望ましい業務を見極める、ということが欠かせません。
またふたつめの「管理手法の検討」は、委託した業務はまかせっきりではなく、具体的な手法や進捗などを管理する必要があります。これはアウトプットに対しての管理だけでなく、セキュリティやガバナンスの面や委託先の経営状態や事業状況などの管理も必要となります。
海外BPO(海外アウトソーシング)の動向
アウトソーシングは業務の一部を委託する、BPOはある業務プロセスまるごと(企画/設計~実施など)を委託する違いはあるものの、自社の業務を海外の体制へ委託することを指します。またその委託先を国内ではなく海外にすることで、国内にはないメリットを享受することを期待しています。
業務内容は、データ入力などの簡単な内容から高付加価値の内容へと進化しつつあり、海外アウトソーシング(海外BPO)は単純な業務を委託するだけでなく、戦略的なパートナーという立場になりつつもあります。
次からは海外アウトソーシングの動向と今後の見通しを、整理していきます。
求められる理由
もともとアウトソーシングやBPOはコア業務以外を外部に委託することにより、コア業務に集中し業務効率をあげることが目的でした。
また現在、日本では国内市場から海外市場への進出をしている企業が多くあり、またその逆も多くなってきています。そのため自社全てのオペレーションをしていたら、事業展開のスピードや海外環境への適応などで遅れをとり、グローバル競争で勝ち抜くことが難しいこともきっかけになっています。
これからの企業にとっては、自社のリソースをコア業務に集中させ、その他の業務はコストを見ながらアウトソーシングし、競争力を高めていく必要があります。そのなかで、特にコストが安くさらにスキルがあがっている海外アウトソーシング(海外BPO)にも注目が増しています。
今後の動向
IT専門調査会社 IDC Japan 株式会社が実施している国内BPOサービス市場予測によると、2022年にはBPOサービス市場規模は8,769億円になるといわれています。この数字は伸び続けており、今後も伸びていくことが予想されます。
日本は少子高齢化で、長い目で見ると日本人労働者の数は減少していくとみられています。今後、労働力の数が少なくなっていくと、その穴を埋めるために海外アウトソーシング(海外BPO)の需要が高まっていくと考えています。
人材を自社で採用・育成・定着させる費用も増加傾向にあるため、このコストのかわりに、近年ではミャンマーやベトナムなど、人件費を安くおさえられる国への海外アウトソーシング(海外BPO)需要が高まっていることがあります。
また、これまでは中国やインドの企業への評価が高かったのですが、ミャンマーやベトナムなどの国で語学力やITスキルなどが上昇していることから評価が高まりつつあります。これまで中国やインドのBPOを使っていた企業が、ミャンマーやベトナムなどの地域にシフトチェンジをすること増えていくと考えます。
ASEAN地域、特にミャンマーやベトナムなどは、日本と違い若い労働力が豊富な国です。人の増員や維持など継続的な委託を考えると、労働力の確保の面でも優れていると考えられています。
委託先は国内か、海外か
BPOを活用するにしても、国内にするか、海外にするかで悩む事業者の方も多いようです。それぞれ一長一短ありますので、以下に整理してみます。
国内の場合のメリットと留意点
やはり、なんと言っても国内事業者は日本語対応の心配がなく、コミュニケーションが取りやすい点が一番でしょう。日本の商習慣を踏まえた取引条件や仕事の進め方で速やかにBPOをスタートさせることができるのもメリットです。
特に作業指示が曖昧でも行間を読むことで、理解できることが多くあります。また打合せなどでも共通の認識がベースにあるので、言わなくても相互に理解できるメリットがあります。
一方で、人材不足とコスト高という日本国内の問題は解消できません。例えば、事業拡大に合わせて人員の拡大をしようと思っても、急にラインを拡大することはなかなか難しくなります。また日本国内での体制が大きくなればなるほど、海外BPOと比べたときのコスト差が大きくなります。
つまりコストを考えた場合、付加価値の高い作業であれば国内で体制を作っても費用対効果がでる可能性はありますが、大量で付加価値の低い単純作業になればなるほど、コストを優先して海外BPOに出す方がメリットが大きくなります。
海外の場合のメリットと留意点
国内のBPOサービスでもメリットの恩恵が受けられますが、日本よりも人的コストが安価な海外に委託することで、コスト面のメリットが大きくなることが考えられます。また日本では生産年齢人口が下がっており、人材の確保そのものが難しいですが、これが増えている国では、労働力の確保がさらに容易になるメリットもあります。
また国ごとの時差を利用して、例えばシステム開発やコールセンターなどでは海外拠点と連携して24時間対応の体制を構築することがあります。このように業務と時差が合えば、例えば日本の終業後に処理業務を委託して翌朝には完了している業務の組み方が出来る可能性が考えられます。
また海外BPOの留意点は国内BPOのメリットの裏返しで、次の2つです。
- コミュニケーションの不安
- 品質/作業管理の難しさ
海外BPOは、コミュニケーションとして言葉の壁があり、意思疎通に対して不安が残るケースがあります。細かいニュアンスや指示が伝わらなかったり、また文化の違いなどから認識の違いが発生したりすることがあります。
また同様の理由から、品質に対する考え方が違っていたり、作業管理のレベルや内容に差があったり、作業進捗に思わぬ時間がかかってしまったりと、日本で作業委託する場合と比べて注意して対応する必要があります。
海外に委託した方がいい業務
国内BPOと海外BPO、それぞれのメリットや留意点を踏まえ、どういった業務を海外BPOに委託する方がいいかの観点では、以下の3つがあります。
- 業務時間にとらわれない業務
- 労働集約型の業務
- ボリュームがあり、集約することで生産性が高まる業務
「業務時間にとらわれない業務」とは、海外では時差がありますので、委託側と一緒の時間帯で作業をすることが難しい場合もあります。作業として切り分けができ、作業時間は何時でも構わない場合、海外BPOのメリットは大きくなります。
選ぶ国によっては、就業時間に依頼をし、始業時間には出来上がっているなど、時差を活用した依頼の仕方をすることもできます。
「労働集約型の業務」とは1つ1つの作業に対し付加価値の高いものは、日本国内でそれなりにコストをかける意味があります。しかし、単純作業のような付加価値の低い作業は単価の安い国へアウトソーシングすることで、費用対効果を得ることができます。
特に大量のデータを扱うケースや、機械で自動化できないけどコツコツとした作業などは、海外BPOで安価に実現することが可能です。
「ボリュームがあり、集約することで生産性が高まる業務」とは、委託作業は1人あたりの作業習熟度によって、生産性が変わってきます。特に一定以上の作業ボリュームがある場合では、1人あたりの生産性の差が結果として大きな差になることがあります。
このような場合、複数の会社に委託するのではなく、多くの人材の確保が容易な海外BPOへ集約することで、生産性を上げながら委託量を増やしていくことが可能になります。
海外BPO(海外アウトソーシング)の事例
アウトソーシングの内容は様々で、データ入力などの単純な作業から、ITスキルが必要となる業務など多岐にわたっています。しかし海外アウトソーシング(海外BPO)を行うにあたって身近に例がないと少しイメージがし辛い部分もあると思います。
今回は、海外アウトソーシング(海外BPO)を行っている例を紹介しますので、これからアウトソーシングを始める企業や検討中の企業にとって、参考になればと思います。
海外へのコールセンター拡張の例
この企業では、ECサイトを国内向けだけでなく、海外向けにも構築していました。対応するコールセンターは国内に設置していましたが、海外に移転し同時にアウトソーシングすることも考えていました。
海外BPOを導入するポイントとしては、海外に移転をしてアウトソーシングすることで、コールセンターの規模を拡張する際に国内との連絡をとりやすくし、また通話料をできるだけ抑えたいと考えています。また将来的には更に規模を拡張しようと考えています。
海外アウトソーシングを導入した結果、WEB回線を使ったコールセンターを使うことで、リアルタイムでのモニタリング、また海外と国内との通信を内線化することにより、国内と同じ金額で海外のコールセンターとの連絡が可能になりました。
また、日本でコールセンターを開設、及び拡大を行おうとすると、人材の募集や場所の確保を行うために多くの時間や費用が必要になっていましたが、海外アウトソーシングにコールセンター業務を委託することにより、時間とコストを抑えながら開設、拡大することができるようになりました。
化粧品の海外事業部のアウトソーシングの例
この企業では、海外事業部が英語や中国語の顧客対応や、マーケティング業務等をアウトソーシングしています。
海外BPOを導入するポイントとしては、海外での販売数を増加させるため拠点を作って店舗を増やすことを目的に、海外での業務をアウトソーシングしています。
海外アウトソーシングを利用することによって得られた効果は、短期間で海外進出をすることに成功しただけではなく、なじみの薄い他国についても委託先のノウハウを使って展開を広めることができました。
人材派遣会社が人材確保に活用した例
この企業では、国内の人手不足の影響を受けてなかなか人材をスカウトすることができず、面談数や成約数が落ちている状況でした。
海外BPOを導入するポイントとして、スカウトメールの準備や配信など、スカウトのために必要な定型的な事務業務をアウトソーシングすることにより、スカウトメールの絶対数増やして成約数を増やすることを目的としていました。業務内容は比較的単純作業で大量の業務があるため、コスト面を考えて海外アウトソーシングに委託しています。
海外アウトソーシングを導入した結果、スカウトメールの絶対数の増加に伴い、面談設定数が増えつつもスタッフの負担が減ったことから、成約数を大幅に増やすことができました。また国内で業務していた時と比べて、コスト削減を30%することにも成功しています。
委託先として優れているミャンマー
海外BPOは、長年中国やインドの企業への委託が多く行われていました。前述のとおり、近年ではベトナムやフィリピン、ミャンマーなど他の国への委託も増加しています。ミャンマーは2011年に民主化されたことをきっかけに、経済発展を続けている国になります。東南アジアのラストフロンティアとも呼ばれ、大きな注目を浴びています。
そもそもミャンマーとはどのような国なのでしょうか。またミャンマー人の特徴についてもご紹介しながら、海外BPOでミャンマーが選ばれている理由を詳しく説明していきます。
ミャンマーの基礎データ
面積 |
68万平方キロメートル(日本の約1.8倍) |
人口 |
5,141万人 |
首都 |
ネーピードー |
民族 |
ビルマ族(約70%) |
言語 |
ミャンマー語 |
*参考 外務省HPより抜粋
日本は2011年ミャンマー政府が民主化したことをきかっけに、経済協力支援を続けています。2017年度の日本からミャンマーへの支援金は以下のようになっています。
有償資金協力 |
11,298.35億円 |
無償資金協力 |
3,038.94億円 |
技術協力 |
880.06億円
|
参考 外務省HPより抜粋
経済面以外でも、スポーツやメディア食文化などを通じてさまざまな交流を行い、在日ミャンマー人は2018年現在で24,471人と多く、実はミャンマーは日本にとって身近な国となっています。
ミャンマー人の特徴
ミャンマー人を一言であらわすと「おっとり」という言葉がぴったり当てはまります。いつも笑顔でどこかゆったりと暮らしていて、いらいらしている人を見ることが少ないです。
またミャンマー人や優しく、相手を対して理解をしようとしてくれます。さらにミャンマー人は親日家であることも大きな特徴です。特に日本人とやりとりをするとき、日本に憧れを持つ方もいることから、素直に話を聞いてくれることが多くあります。しっかりと褒めてあげると、よいコミュニケーションをとることが可能です。
同時に、マジメでコツコツと進めることが得意な特徴もあります。場合によっては日本人が嫌がるような仕事でも、ミャンマーでは人気が高いこともあります。
このようにどこか日本人と似たような特徴を持つミャンマー人は、コミュニケーションをしっかりとっていくと日本人と相性が良いことがわかってきます。
ミャンマーが選ばれる理由
さて次に、海外アウトソーシング(海外BPO)としてミャンマーが選ばれる理由を、整理していきます。
ミャンマーの日本語教育
ミャンマーでは、2011年以降に日本語の語学学校が増加しています。特にミャンマー最大の都市であるヤンゴンでは、決して広いとはいえないエリアに300以上の日本語学校があります。ミャンマーで日本語を学ぶ生徒の多くは、自身の興味や勉強のために行う方や、日系企業で働くことを目的としている方などがいます。特に在留資格が認められてからは、日本で日本語力を活かして働く人も増加しています。
このことからも、コミュニケ―ションをとるために必要な日本語力があり、さらに日本の企業とのやりとりをすることでモチベーションを保っている方が多くいます。
安価な人件費とIT教育
海外アウトソーシング(海外BPO)は、コスト面のメリットを享受するため人件費が安い国へ委託されることが多くあります。中国での人件費高騰もあり、ミャンマーは中国よりも人件費が安く、アウトソーシングのコストを抑えることができます。またミャンマーの経済発展により、これまで中国にアウトソーシングをしていた企業がミャンマーへ移行したケースも多く聞かれます。
またミャンマー人はまじめで勤勉であり、最近ではIT関連に関しても技術があがっています。そのためデータ入力などだけでなく、画像の加工やゲームの開発などさまざまなスキルをもっています。またセキュリティの強化にも近年力を入れている点でも安心です。
労働力と年功序列
日本では少子化により生産年齢人口は減少していますが、ミャンマーでは優秀な若者が多いのに労働場所がまだ少ないという状態です。さらに日本とミャンマーでは賃金差が20倍といわれ、優秀な若者が日本企業(委託という意味も含めて)で働きたいと思っています。
またミャンマーでは日本と同じように年上を敬い、職場でも年功序列があることが多いです。そのため現在でも年功序列の意識が強い日本企業のやり方には、すんなりと慣れる方が多くいます。宗教の面でも、ミャンマーは仏教文化が根付いていることからも、どこか日本人と似た感覚を持っています。
弊社のサービス紹介
ミャンマーは2011年の民主化から、世界中の国が進出するようになり急激な経済成長を見せています。その反面、まだまだ賃金が安いことからも、海外アウトソーシング(海外BPO)のコストメリットを享受することができます。
直近では、カントリーリスクである政治的な弱さが目につきますが、それでもミャンマーでのアウトソーシングは問題なく継続しているだけでなく、むしろ拡大しているように感じています。
アンドファンでは、ミャンマーBPOサービスとして各種委託業務やご相談を承っておりますので、ご興味がある方は、お気軽にお問合せください。
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中小企業診断士 田代博之