作業者 テンポラリー
毎年中小企業庁から発表される中小企業白書は、様々な統計データからその年の景況感や中小企業の状況、中小企業の事例、または今後注力していく施策などを見ることができます。
かなり内容が多いので、詳細に確認してくことは大変ですが、大きな流れを確認するだけなら、概要版を確認するとそこまで内容は多くないのでお勧めです。
私も毎年確認しているのですが、今回は2021年4月に公開された中小企業白書の中から、中小企業の海外展開に対する状況と、今後の見通しなどを確認していきたいと思います。
まずは中小企業が現状でどれだけ海外展開を行っているのかを、下図の海外展開比率で見ていきます。
出典:中小企業庁「2021年度版 中小企業白書」より
近年の傾向を見ると、わずかに上昇していることが見て取れますし、中長期的な視点でも増加傾向にはありますが、直接輸出が21.4%、直接投資が15.0%と、高い数字ではないように思います。
間接輸出の数値を含めると、もう少し大きい数値になると思いますが、それでも割合としてはそこまで高くないのだと感じています。
海外向けにビジネスを行う企業の景況感としては、直近のコロナウイルスによる売上への影響としては、マイナスの影響があったと回答している企業が6割超になっています。こちらは国内売上への影響もマイナスの影響があったと回答している企業が6割超になっているので、同じくらいインパクトが大きかったと思います。
直近のコロナウイルスにおける事業環境の変化が大きくなると、戦略や方向性の見直しを迫られることもあると思いますが、どのような見直しを検討しているのか見ていきます。
出典:中小企業庁「2021年度版 中小企業白書」より
こちらを見ると、販売戦略の見直しが一番多いことがわかります。売上的なマイナス影響が大きいため、このような結果になっているのだと思います。販売戦略の見直しの中では、下図のように「海外販売先(ターゲット)の見直し」が一番多く、「バーチャル展示・商談会等活用の推進」、「越境EC販売開始・拡大」などITを活用した販売機会の創出となっています。
出典:中小企業庁「2021年度版 中小企業白書」より
海外販売先を見直すにあたり越境ECは有効な手段となり、国内外問わずEC利用は拡大傾向にあります。下図では販売方法でECを利用している企業のうち、越境ECを利用している割合を見てみます。
出典:中小企業庁「2021年度版 中小企業白書」より
これを見ると、ECを利用している企業の半分近くが越境ECを利用していることがわかりますが、特に中小企業の割合が高い点に注目しています。これは中小企業でも実現が比較的容易な環境が整ってきているのだと感じています。
越境ECの販売先としては対米国と対中国が多く、どちらも直近5年間は増加傾向で推移し、市場規模は拡大しています。詳細なデータはありませんでしたが、越境ECの環境が整っているのであれば、米国と中国以外に向けた越境ECも拡大傾向にあるのだろうと感じています。
白書の中では、中小企業の取組み事例もありますので、お時間があれば確認してみて下さい。
中小企業庁:https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2021/chusho/b2_1_4.html
コロナウイルスによる事業環境の変化はとても大きかったと思っています。今でも影響は続いていますが、回復を待つだけではなく変化に併せた対応も求められてきます。
最近は、急場の資金面での支援だけでなく、事業変革や売上向上に向けた各種施策や補助金もありますので、この辺りの情報も集めながら検討を進めていくことが大切だと思っています。
海外展開や越境ECは販売戦略の一つの候補だと思っています。
弊社では、海外展開やECサイトのご相談も無料で行っておりますので、お困りごとやご不明な点等をお気軽にお問い合わせ下さい。担当者より折り返しご連絡させていただきます。
アンドファン株式会社
中小企業診断士 田代博之