作業者 テンポラリー
おはようございます。
植物や魚の世話を行うことが面倒になったり、忘れてしまったりして、苦い経験をしたことはありませんか。私はあります、子供の頃に金魚を飼ってみた時、最初は楽しんで世話をしていたものの途中で飽きてしまい、世話をしなくなる・・・皆さんもそんな経験あると思います。
そんな苦い経験から解放してくれるかもしれない商品が下の画像です、いったい何に見えますか?家庭菜園でしょうか、観賞用のアクアリウムでしょうか。
なんとそのどちらも兼ね備えた、家庭でアクアポニックスが出来る「アクアスプラウトSV」という商品です。生態系を利用しメンテナンス負荷が少なく、植物や魚を飼育できる商品です・・・といっても、恐らく多くの方がご存じではないと思いますし、私も初めて聞いたときは正直「珍しい商品だな」位の感想でした。
ところが、この商品のベースにある「アクアポニックス」のお話を聞いているうちに、とても興味深く、日本だけでなく海外においても大きな可能性を秘めていると思いましたので、ご紹介しながら思うところをまとめて行きたいと思っています。
アクアポニックスとは水耕栽培と水産養殖を掛け合わせた農業の形で、もっとも地球にやさしい農業と世界中から注目されている、循環型農業になります。
仕組みを簡単に説明すると、飼っている魚がアンモニア(排泄物)を排出→微生物が硝酸塩(植物の栄養)へ分解→植物が硝酸塩(栄養)を吸収して育つ→きれいになった水が水槽に戻る、と行った流れで循環します。自然界で起きている「窒素循環」を利用して植物や魚を育てる、つまり小さな生態系を感じることができる仕組みです。
上記の「生態系」はアクアポニックスを理解する上で、とても重要なキーワードになります。続いては、私なりの捉え方になりますが、このアクアポニックスの特徴(メリット/デメリット)をまとめてみます。
アクアポニックスでは、特殊な装置や専用の機器は不要で、簡単に言えば水を循環させることができればいいので、設計の自由度は高くなりコストも抑えられます。家庭でできる小さなものから商業用の大規模なものまで、利用することができます。また設置する場所が室内であれ、屋外であれ、設置をすることが可能になります。
家庭菜園であれば、土づくり、肥料、水やり、除草、害虫対策などのメンテナンスが必要です。またアクアリウムであれば、エサやり、水換えなどが必要となります。
アクアポニックスでは、土を使っておらず、水換えが必要になる原因のアンモニアは分解されることから、メンテナンスは魚のエサやりと蒸発した分の水を補給することが主になります(理想は定期的な水質チェックをした方がいいようです)。
アクアポニックスでは、農薬の類は一切使用しませんので、育った野菜は完全オーガニック(無農薬)になります。また消費者にとって、野菜がオーガニックかどうかを見極めることはなかなか難しいですが、これは視覚的に訴えることができます。
また使用する水が少ない事や自然の力を利用していることから、エコ活動のPRに繋げることも可能です。
アクアポニックスは生態系を利用しているため、逆を返せば全体のバランスを構築/維持する必要があります。簡単に言うと、植物の量を増やしたいなら魚の量(アンモニア)を増やす必要があるように、全体としての適切な量に配慮する必要があります。
これが崩れると、植物が枯れたり、魚が死んでしまったりすることがありますので、アクアポニックスを行う上での注意点となります。
世界に目を向けると、発展途上国支援、家庭菜園、都市型農業、教育など、個人利用から商業利用まで幅広い広がりを見せているようで、多くの情報や実証データが存在します。しかし日本においては、認知度の低さからまだまだ情報が不足している問題があるようです。情報が広がってくると導入ハードルも下がり、活用方法も広がってくると思いますし、事例や実証データが増えると商業利用も増えてくるのだと思います。
今回、アクアポニックスをご説明頂いた㈱おうち菜園様は、「アクアポニックスを日本、そして世界に広めたい」という想いで事業を展開されています。私は、実際の商品に触れ、仲間と出会い交流する場である「アクアポニックス展示&交流会」に参加させて頂き、代表の濱田様のお話を伺いました。
自社のサイトでは、アクアポニックスの情報を発信していたり、様々な取り組みが紹介されていたり、創業ストーリーが記されていたりと、たくさんの情報を発信されています。
現在は、家庭用育成キット「アクアスプラウトSV」の販売だけでなく、アクアポニックスを中心とした、以下の事業を展開されています。
・基礎から実践まで体系的に学べる「アクアポニックス実践マニュアル本」の販売
・日本初のアクアポニックスの学校「AQUAPONICS ACADEME」の運営
・関連資材の販売
・農業視察/コンサルティング
アクアポニックスは、認知度が高くないためあまり普及していないだけで、個人で楽しむために使用する分にはお金も手間も多くかからないですし、趣味としてすごくいいものだと感じています。早速、私の知人に話をしてみましたが、興味津々になっていました。
とはいえ、濱田様も仰っていましたが、日本で商業用として利用するためには、可能性はあるけれどもハードルもあると感じています。例えば、農業や植物工場(水耕栽培)や家庭菜園と違い市場が無かったり、日本は冬があり対策が必要(コスト増)であったり、農地や設備が整っているので導入に障壁があったりするようです。
逆に言えば、沖縄や東南アジアのような暖かい気候が続くエリアは適していたり、農地が整備されていない国にとっては導入の障壁も少なかったりするので、可能性は大きいようです(アカデミーの卒業生でベナン共和国の方もいらっしゃいました)。
また農業とITやIoTも相性が良く、実際の導入も進んでいますし、このアクアポニックスでも、アンモニア濃度の管理や温度管理を遠隔で行ったり、カメラを通じで現状をモニタリングしたり、エサやりを自動化したり・・・と、大きな費用をかけなくてもいろいろできるなと思いながら、お話を聞いていました。
アンドファンに話を向けると、東南アジアのミャンマーで事業を行っていますし、ITやIoTの事業も行っているので、漠然としていますが相性は良さそうなので、何か面白い関わりが出来るのではないかと勝手に思っています。しかし、私はこの業界に深い見識があるわけではないので、まずはもう少し勉強が必要そうです。
それではまた。
アンドファン株式会社
中小企業診断士 田代博之