田代 博之
人材不足が加速するにつれて、業務委託の手法として多くの企業が関心を持っている、BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)とアウトソーシングですが、これらの違いや最適な選び方については多くの方が迷うところです。
この記事では、BPOとアウトソーシングの基本定義をはじめ、提供されるサービスの範囲やコストと効果、さらに選び方のガイドまで詳しく解説します。また、各手法のメリットとデメリット、注意点についても触れていますので、自社に最適な業務委託方法を見つけたい方には必見の内容となります。
BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)は、企業の特定の業務プロセスを外部の専門業者に委託することを指します。この専門業者は、業務の効率化やコスト削減を実現するため、自社内で行うよりも高品質かつ低コストで業務を遂行してくれます。
BPOは、IT、財務、人事、カスタマーサポートなどの分野で広く活用されています。最近では、多くの企業が海外へのBPOも検討しています。特に人件費が安価なアジア諸国へのBPOが人気となっています。
アウトソーシングは、企業が自社で行うべき業務の一部または全体を外部の専門業者に委託することを指します。例えば、製造業で外部の工場に製品の一部を製造してもらうことや、IT業界でソフトウェアの開発を外部の企業に任せることが該当します。これにより、企業はコア業務に集中することができ、リソースの有効活用が進みます。
アウトソーシングの一例として、製造業での製造委託や、IT業界でのソフトウェア開発、ECサイト制作の委託。データ入力業務など、それぞれの専門業者に委託することがあります。
*参考記事
海外データ入力(データエントリ)のすべて!メリット、デメリットと日本との違いを徹底解説
BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)とは、企業が自社の特定のビジネスプロセス全体を外部の専門会社に委託することを指します。これに対し、アウトソーシングは、企業が特定の業務やタスクを外部に委託することで、必ずしもビジネスプロセス全体を含むわけではないと解釈されています。
BPOは、人事、財務、顧客サービス、ITなどの複数のビジネスプロセスにわたる場合が多く、全体的な業務効率の向上を目指します。一方、アウトソーシングは、特定のタスク(例:清掃、配達、特定のIT作業など)に焦点を当て、そのタスクが効率的に遂行されることを目的としています。
BPOでは、外部の専門会社が委託された業務プロセス全体を一元的に管理します。これには、プロセス全体の戦略、計画や改善、定期的なパフォーマンスの評価などが含まれます。BPOサービス提供会社は、委託されたプロセスの効率性を高めるために、専門知識や最先端のテクノロジーを活用します。
一方、従来のアウトソーシングでは、特定の業務やタスクを外部に委託しますが、全体的な管理責任は依然として依頼する企業側に残されることが一般的です。そのため、企業は外部のサービス提供会社と連携しながら、自社内部での統制と管理を維持する必要があります。
コスト削減は、BPOとアウトソーシングの主な目的の一つになりますが、そのアプローチと効果には違いがあります。
BPOの場合、プロセス全体を外部に委託するため、初期投資は大きくなるものの、長期的には全体的なコスト削減が期待できます。これにより、企業はコアなビジネス活動に集中でき、全体的な効率性と競争力が向上します。
一方、アウトソーシングでは、特定の業務やタスクにおけるコスト削減が即時に期待できるため、短期的なコスト削減が可能です。しかし、アウトソーシングの範囲が限定されているため、長期的に全体的な効率の向上には限界があります。
項目 | BPO | アウトソーシング |
---|---|---|
提供されるサービスの範囲 | ビジネスプロセス全体を含む | 特定の業務またはタスク |
業務プロセスの管理 | 外部パートナーが一元管理 | 企業が全体管理を保持 |
コストと効果 | 長期的なコスト削減と効率向上 | 短期的なコスト削減効果 |
BPO(Business Process Outsourcing)は、企業が業務プロセスを外部の専門業者に委託することによって、多くのメリットを享受できます。以下では、その代表的なメリットをいくつか紹介します。
3.1.1 コスト削減内製で業務を行う場合、スタッフの雇用やトレーニング、設備の購入など、多くのコストがかかります。BPOを活用することで、これらのコストを削減することができます。BPOのサービス提供者は、専門的な設備や技術を持っているため、効率的に業務を行うことができ、その結果、コスト削減が可能になります。
3.1.2 業務の専門化BPOサービスの提供者は特定の業務に精通しており、高度な専門知識と技術を持っています。これにより、内製では難しい高度な業務もスムーズに処理できるため、企業全体の業務クオリティが向上します。
3.1.3 柔軟性の向上BPOを利用することで、企業は必要に応じて素早く外部リソースを活用できるため、業務量や事業環境の変化に対して柔軟に対応することができます。これにより、市場の変動や急な需要増加にも迅速に対応できるようになります。
3.1.4 コア業務に集中できる非コア業務を外部に委託することで、企業は自社のコア業務に集中することができます。例えば、新商品の開発やマーケティング戦略の立案など、競争力強化につながる重要な業務にリソースと時間を割くことが可能になります。
一方で、BPOにはいくつかのデメリットも存在します。以下に、主要なデメリットとその対策について説明します。
3.2.1 依存リスクBPOに過度に依存すると、その委託先企業とトラブルが発生した際に影響を受けるリスクがあります。委託先を適切に選定することと、トラブルが起きないように関係性を構築する、まめなコミュニケーションをとるなど、リスク軽減の対策も必要になります。
3.2.2 コミュニケーションの課題異なる企業間での業務委託においては、コミュニケーションがスムーズにいかない場合があります。特に、異なる文化や言語が介在する場合には、誤解やミスが発生しやすくなります。このため、明確な連絡体制や定期的なミーティングと併せて、リアルタイムでコミュニケーションが取れるチャットツールの活用も有効です。
3.2.3 品質の管理外部業者に業務を委託する場合、その業者が自社の品質基準を守っているかどうかを、定期的に確認する必要があります。定期的なパフォーマンスレビューやKPI(重要業績評価指標)の設定を行い、品質管理を徹底することが求められます。
3.2.4 セキュリティリスク外部の業者に業務を委託する際、機密情報の取り扱いに注意が必要です。不正アクセスや情報漏えいのリスクを防ぐため、必要な対策ができているか、作業者の教育が行われているかなど、定期的にセキュリティチェックを行うことが重要です。
アウトソーシングにはさまざまなメリットがあります。以下にその主な利点を具体的に示します。
4.1.1 コスト削減アウトソーシングによるコスト削減は、多くの企業にとって大きな魅力です。特に人件費や設備投資が減少することで、運営コスト全体を効果的に抑えることができます。
例えば、人事業務や会計業務を外部に委託することで、内部で専任のスタッフを雇う必要がなくなり、直接的な人件費を削減することが可能になります。
4.1.2 業務効率化専門的な業務を外部の企業に任せることで、業務の効率化が図れます。外部のプロフェッショナルがその業務を担当するため、質の高いサービスが提供され、社内リソースをコアビジネスに集中させることができます。
4.1.3 リスクの分散特定の業務を外部に委託することで、企業リスクを分散することができます。例えば、ITシステムの管理をアウトソーシングすることで、システム障害時の対応をより迅速かつ専門的に行うことができ、企業全体のリスクを低減できます。
4.1.4 新しい技術の導入アウトソーシング企業は最新の技術やノウハウを持っている場合が多く、それを活用することで自社の技術基盤を強化することができます。これにより、新しい市場やビジネスチャンスにも迅速に対応できます。
一方で、アウトソーシングにはいくつかのデメリットも存在します。これらを理解しておくことで、リスクを最小限に抑えるための対策を講じることができます。
4.2.1 契約リスクアウトソーシングする業務内容が不明確な場合、期待したサービスを受けられない可能性があります。契約書の詳細をしっかりと確認し、双方の責務や期待値を明確にしておくことが重要です。
4.2.2 コミュニケーションの問題アウトソーシング先とのコミュニケーションが円滑でないと、生産性やサービスの質に影響を与えることがあります。特に異なるタイムゾーンや文化的な違いがある場合、効果的なコミュニケーション戦略が求められます。
4.2.3 サービスの質の低下外部に業務を委託すると、サービスの一貫性や質が低下するリスクがあります。このため、委託先の選定には細心の注意が必要です。過去の実績はもちろんのこと、実際に管理者と会話をする場を設けたり、様々な角度から情報を集めておく必要があります。
4.2.4 内部ノウハウの喪失アウトソーシングに依存しすぎると、社内でのノウハウが蓄積しにくくなります。これにより、将来的には自社でその業務を再開する際の障害となる可能性があります。
以上のように、BPOもアウトソーシングも、多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。これらを天秤にかけ、最適な業務委託の方法を検討することが重要になります。
最適なBPOまたはアウトソーシングの選択を行う上では、まず業務内容の評価が不可欠です。業務の複雑性や専門性を基準に、社内で実施すべきか外部に委託すべきかを検討します。
*参考記事企業は以下のステップに従い、業務内容を評価することが推奨されます。
BPOとアウトソーシングの選択において、コスト削減と業務効率化は最も重要な要素の一つです。これらのバランスを計算し、最適な選択肢を見つけることが成功の鍵となります。
5.2.1 コスト削減コスト削減の観点からは、以下のポイントを考慮します。
業務効率化の観点からは、次のポイントがあります。
適切な外部パートナーを選定するためには、信頼性と実績に基づいた評価が必要です。以下のガイドラインに従って選定基準を設定します。
5.3.1 信頼性外部パートナーの信頼性を確認するには:
実績に基づいて外部パートナーを評価するためには:
契約書はBPOやアウトソーシングを導入する際の基礎となりますので、詳細に確認することが求められます。特に以下の点を注意深くチェックしてください。
6.1.1 契約期間契約期間を設定する際には、短期・中期・長期のそれぞれのリスクとメリットを検討することが重要です。期間終了後の更新や終了条件も明確に記載しておきます。
6.1.2 サービス内容提供されるサービスの範囲や品質基準が明確に定められているか確認します。これにより、期待される成果を確実に達成するための基盤が整います。
6.1.3 契約解除条件契約解除がどのような条件で可能であるかを明確にしておきます。この情報があることで、予期せぬ事態が発生した時に迅速に対応できます。
BPOやアウトソーシングを実施する際には、リスクマネジメントも重要です。可能なリスクを洗い出し、それに対する対策を講じることで、安心して業務を外部に委託できます。
6.2.1 データセキュリティ外部に業務を委託する場合、データセキュリティが特に重要です。適切なセキュリティ対策が講じられているか、またデータの管理方法についても確認が必要です。
6.2.2 情報漏洩の防止機密情報の漏洩を防ぐための措置を講じることが求められます。情報漏洩に対する罰則や対応策も契約書に明記しておくと安心です。
6.2.3 リスク分散一つの外部業者に依存しすぎるとリスクが集中するため、複数の業者と契約することでリスクを分散させることも考慮に入れます。
BPOとアウトソーシングは、外部の企業に業務委託を行う点では共通していますが、それぞれ異なる特性を持ち、企業がどのサービスを選ぶかは目的と状況によって異なります。
昨今の人材不足の状況では、人的リソースを確保するために、外部に業務委託する企業は増加すると考えます。無理に自社内で抱え込まず、早めに外部委託することで、委託先との関係性構築や、委託のノウハウなどを得ることができます。
当社では、ミャンマーでのアウトソーシング事業を行っておりますので、ご興味がある方はスタッフまでお気軽にお問合せください。当社のノウハウが詰まった、情報収集や比較検討に役立つ資料を、無料配布中
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