作業者 テンポラリー
先日「アンケートからみる倒産の原因と対策」の記事で、企業の倒産理由や原因、またその際に誰に相談をしていたかのアンケート結果をご紹介しました。
先日、佐久間製菓が来年1月に廃業するとニュースに出ていたこともあり、改めて最近の倒産件数などを調べてみました。
2020年から続くコロナ影響での販売不振や、直近では急激な円安の影響によるコスト増などで、経営環境は苦しくなっています。それに合わせて、コロナ禍で大きく行われた中小企業への融資も返済が始まったところもあるようですので、この辺りの影響も出てくるかもしれません。
中小企業庁のHPから統計データを見てみると、2021年には昨年対比で減少しましたが、2022年では徐々に増加傾向にあり、足元の9月は前年同月比18.6%と突出して増加しています。詳細は以下のリンクからご確認ください。
中小企業庁HP:https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/chousa/tousan/index.htm
出典:東京商工リサーチ(http://www.tsr-net.co.jp/)調べ 筆者で加工
業種別のグラフで見てみると、全体的に横ばいか増加傾向に見えますが、特に建築業、小売業、サービス・その他(1次産業含む)は9月の時点で突出して増加しています。
アンケートで獲得している倒産原因を見てみると「販売不振」が群を抜いて高く、その後に「連鎖倒産」「既往のしわよせ」が続いています。
冒頭で佐久間製菓さんの廃業のお話をしました。114年も続いていた老舗企業で、看板商品の「サクマ式ドロップス」は皆さんもよくご存じだと思います。
画像:佐久間製菓株式会社
ニュースで見る限りですが廃業する理由には、コロナ下での販売減少、原材料の高騰、エネルギー価格の高騰、人手不足があったようで、今までのアンケートとも大きな違いはありません。
さて、廃業を決めた佐久間製菓とは別の会社で、サクマ製菓をご存知でしょうか?
看板商品は「サクマドロップス」で、正直私はこのニュースが出るまで知りませんでした。というより、どちらの製品も同じものと認識をしていました。
どちらも缶ドロップスを看板商品として製造/販売している会社ですが、元々は同じ会社から分かれた経緯を持つようです。ブランド的にも商品的にもとても似通った商品を作る会社で、佐久間製菓は廃業になり、サクマ製菓は営業を続けています。
いったい両社にどんな差があったのか、気になります。
商品数は佐久間製菓が34種、サクマ製菓が35種と変わりませんが、サクマ製菓は「「サクマドロップス」の関連商品の割合が低くなっています。つまり、缶入りドロップス以外の定番商品(いちごみるく、チャオ)があったり、タイアップ商品が展開していたりしています。
あくまで一つの可能性ですが、看板製品への依存度が高くなれば、販売不振や原価高騰の影響も大きくなります。併せて販路が固定化していると、連鎖的に影響を受ける可能性も大きくなります。中小企業の多くは、少ない顧客に売上の多くを依存している会社が多いと思いますので、このニュースを見ながら売上依存の危険性を改めて認識しました。
今回お話した看板商品への依存はあくまで推測の域は出ませんが、売上依存が危険なことは間違いありません。話は少し変わりますが、サラリーマンも勤め先1社に依存している典型的な例だと感じています。依存しているからこそ、望まない要求を飲まないといけなくなることもあります。
副業/兼業が進んでいる昨今ですので、サラリーマンでも複数の収益先を持つことが大事になるのだと感じています。
今回は一つのニュースから色々と考えを巡らせてみましたが、普段何気なく見て流しているいるニュースも、ふと立ち止まって色々と考えると、たくさんの気づきを得ることができます。皆さんもよかったら立ち止まってニュースを見る時間を作ってみて下さい。
それではまた
アンドファン株式会社
中小企業診断士 田代博之