作業者 テンポラリー
前回の記事「中小企業における自社ホームページのメリット」では、BtoBのビジネスを行っている中小企業に限定して、ホームページを活用することのメリットを整理しました。
今回は数ある業界の中から中小製造業に絞って、自社のホームページを含めたWEBを活用したマーケティングを考えていきたいと思います。
何となくはわかっていると思いますが、改めてWikipediaで製造業の定義を確認してみましたが、受託製造を行う会社からメーカーとして製造販売を行う会社、作るものも工業製品から食料品まで含めると、結構幅が広いように感じます。
ただし多くの中小製造業に範囲を絞ると、メーカーとしてではなく受託製造を行い、大手を含めた数社で売上の多くを確保し、特殊な技術を保有しているわけではない会社が多いと思います。
それでは、中小製造業における現状を簡単に分析してみます。
また製造業ならではの特徴として、対象となる顧客の幅は狭く、設備や作業者に依存するため商品を簡単には変えられない、BtoBのビジネスのためWEBだけで取引が完結することは少ないなどがあります。
製造業のお客様で新しく取引先を探そうと思う顧客には、どのような目的があるかを分類すると、既存業者からの変更と新規の取引に分けられると思います。
既存業者からの変更は、例えば生産力の拡大、コスト/納期/品質の改善、リスクヘッジなどの目的で、既存業者と同じ仕事を委託するケースになります。また既存業者からの拡張として、違う素材を加工する、加工方法を変える、より精度を求めるなど、既存業者に委託している内容と近いけれども少し違うケースもあります。
新規の取引は、例えば今までは付き合いのなかった業界で新商品を開発する時に、新たな取引先を探すなどがあります。
この2つの大きな違いは、お客様側で保有している情報の差と、WEB検索の方法の差があると思います。例えば既存業者からの変更であれば、相応に専門知識を持っているため、HPに載っている情報も専門的(機械の型番、素材の名称等)な情報を求めます。しかし、新規の取引であれば、専門知識がないため自身の課題が解決できるのかの観点で情報を探すことになります。WEB検索の方法も同様に、専門的な内容か自身の課題かの差が出ます。
活用にあたっては、上記のお客様の差を理解しながら、求める情報をHPに掲載したり見込顧客や潜在顧客に発信したりしていくことになりますが、それ以外のポイントも整理します。
1つ目は、一過性の対応にならないように続けられる仕組みを構築する必要があります。例えば、方向性や目標を定め、先任者や責任者を決め、運用ルールやスケジュールなどを策定し、振り返りや改善の流れを作るなどがあります。その前に、WEBを利活用することのメリットの理解も必要になります。
2つ目は、WEB内でどのようのお客様にアプローチをするかを考えることが必要です。お客様がどのように自社のサイトにたどり着き、どんな情報を見て、何をして欲しい(問合せ等)のかを考えていくことになります。出口は1つだと思いますが、入り口は数が必要になりますので、検索だけでなく他社サイトやおまとめサイトへのリンクも大事になります。
3つ目は、営業パーソンとの連携を取る点になります。WEBで獲得した顧客を営業パーソンに渡す連携だけでなく、リアルで獲得した顧客に対して定期的にアプローチをする、既存顧客にHPの感想を聞いてフィードバックをする、営業活動に必要な情報をWEBに掲載するなど、密に連携が取れると双方にとって喜ばしいことが増えます。
BtoBのビジネスでは、お客様接点を持ってから購入に至るため、時間がかかるケースが多くあります。営業パーソンは既存顧客や短期で購入してくれそうな顧客へのアプローチがメインになるため、時間のかかる顧客へのアプローチはメルマガなどを活用し、定期的にアプローチを行っていくこと、リアルとWEBの切り分けもできて効率的だと思います。
また製造業でSNSの活用を相談されることもありますが、私は無理のない範囲で行うことは賛成です。目先の顧客獲得ではなく、例えば、従業員が楽しんで更新する、地域社会への発信になる、採用者が見るなどを考えると、HPとは違った内容を発信しいていくことは、一定の効果があると考えています。
今回は製造業にフォーカスをあてたないようになりましたが、他の業界でも使える部分はあると思います。私がご支援している中で一番大事だと思うのは、いかに続けられる仕組みをつくれるかにかかっていると思います。
直ぐに結果が出なくても、原因を探り対策を考え少しでも改善することができれば、必ずいい結果にむずびつきますので、根気強く続けられる仕組みを構築して下さい。
それではまた。
アンドファン株式会社
中小企業診断士 田代博之